じゃぱん

 里帰りして、一升瓶をもらったのである。ありがたい。懲りない酒好きである。車の後部座席に寝かせて帰路についた。こういう風に、積載方法を詳細に書いてるとこからしてオチは見えたようなものだが、事件は渋滞巻き込まれた後、到着寸前に起こった。
 交差点進入前30mというところで、対向車線に右折希望のタクシーが見えた。私は直進希望である。ああこれは来る。やっぱ来た。やばいって。ぎりぎりを攻めてくるのである。私は中くらいの急ブレーキを踏んだ。車は結構余裕を持ってスピードダウン。が、後ろでがちゃん。ぎゃふん。すかさず後部座席を見たが、暗くてよく見えない。しかし、ほのかに漂ってくる香りからすると、どうにかなっているのは間違いない様子。
 到着してから、惨状を目にする。瓶の破片は散らばってるし、フロアマットからはぽたぽた滴るし、新聞紙を持ってきて吸収を試みようとしても、あまりの強風に作業は難航を極めるし、ああもう。明日にしよ。
 今こうしているうちにも、甘露な液体はどんどん揮発して、車中アルコール濃度は確実に高まっているのである。もし検問に遭遇したりすれば、私自身は全くもって飲んでいないとしても、引っ捕らえられるのは必然な状況になろう。なんとか乾燥させなければ。